LLE <短>



月曜日の朝。

気だるそうにあくびをする先輩と、廊下ですれ違ったのも。



火曜日の放課後。

真っ赤な夕日の下で、フェンス越しに先輩を見つめていたのも。



水曜日の昼休み。

おいしそうな匂いが立ち込めた食堂で、斜め前に座っていた先輩と、一瞬目があったのも。



木曜日の授業中。

体育のグラウンドで、楽しそうに走り回る先輩を、授業そっちのけで、コッソリ盗み見していたことも。



金曜日は一日中……

先輩に会えなくて、サミシイサミシイって嘆いていたことも。



土曜日も、日曜日も。

お風呂に入る時も、ベッドの中で、夢うつつの時も。


いつだって、先輩のことを思い浮かべない日なんて、あたしにはなかった。



朝も、昼も、夜も。

目を閉じていても。


瞼に焼きついた先輩の笑顔に、あたしは先輩の名前を重ねて、何度も何度も反芻させていた。



だけど、先輩の中に“あたし”という存在は、どこを探したっていないんだ……




そんな風に、確実に流れていく日々。


夏本番を迎えようとする直前、誰もが胸を踊らせる日がやってくる。



だけどあたしは、この夏、生まれて初めて“夏休み”という存在を、憂鬱だと感じた。


だって、先輩に会えなくなっちゃうから――


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