LLE <短>
そうやって、どれだけ会いたい会いたいと、強く願い続けても、届くはずもなく……
いつのまにか過ぎていった、夏真っ盛りの8月のど真ん中。
むせかえるような、真夏日。
意識を朦朧とさせる、蜃気楼の中を歩いているような幻覚に襲われながら、
道端で偶然出逢った、先輩の後ろ姿。
ボサボサの髪で、オシャレもしてなくて、先輩の背中に焦っていたのは、あたしだけ。
先輩は、あたしに気付いてない。
だけどそれは、至極当然のこと。
先輩の隣には、あたしの知らない女の人が並んでいた。
先輩の、笑うと少し垂れる、優しい目は、その人だけでいっぱいだった。
どこまでも晴れ渡る、真夏の青空がよく映える、白い肌が眩しくて、あたしは目を逸らした。
真っ黒なロングヘアーから覗く、シアワセそうな横顔が、恨めしかった。
突っ立っていると、小さくなっていくお似合いの後ろ姿を、あたしはただ、黙って見送っていただけ。
二人の姿が人混みに紛れて、見えなくなると、あたしの瞳は濡れていた。
余計に惨めさが増すだけの迷惑な涙は、どれだけ止まれと念じても、
後から後から溢れ出してきて、あたしの頬を伝い続けた。
まるで、あたしのキモチが、溢れ出しているみたいに。
憧れなんかじゃない。
あたしは、本当に、本当に……
先輩のことが、スキなんだって。
そう、思い知った夏。
知り合いにすらなれないまま、残酷すぎる現実を、唐突に突きつけられた。
ちゃんと始まってもないクセに、イキナリ失恋から始まった、切なくて苦しい、夏――