命
家に帰って私は、
香矢をベッドに座らせ、
いつものように絵本を読んだ。
香矢が大好きだった絵本・・・
香矢はまだ死んでない。
だから、きっとまた笑ってくれる。
絵本を読み終わり、
家の中はしんと静まりかえった。
家の中ではなく、
家の外も、かんさんとしているような気がした。
兄が、部屋から降りてきた。
「お母さん、あのね・・・」
「どうしたの?どこか痛い?」
「ううん、そうじゃないの。あのね・・・よく考えてみたんだけど、僕が、“香矢”って呼んだら、香矢は“おにいちゃん”っていったって話したでしょ?
あれね、本当は、僕なんかの名前じゃなくて、“お母さん”っていったんじゃないかって思ったんだ・・・」
私は隣で冷たくなっている香矢に目を向けた。