-roop-
『帰るのがもったいない』
さっき言われた言葉を心の中で反芻する。
誠さんは私といて楽しかったのだろうか。
偽物と一緒にいて楽しかったのだろうか。
本当の千夏さんと
本当に愛している女性と違うところばかり見えて辛くないのだろうか。
霧の世界で会った千夏さんは、時折少女のような顔を覗かせるも、常に冷静で感情を隠したがるような人だった。
それに比べて、私はすぐ顔に出るし、煙草も吸えない未成年。
その差に幻滅したりはしないのだろうか。
そう思いながらも、
まだ帰るのはもったいないから、と次の場所へと車を走らせていることが、私自身を認めてくれた証拠のような気がして、少し浮かれてしまっている自分がいた。
けれど、その気持ちを自覚した途端
ガラスに映った千夏さんがそれを制する…