-roop-

夜の街を静かに走る車。

眩しいネオンが窓の外を駆け抜けていく。

ラジオからささやかに聞こえてくる洋楽。

ふと足元に置かれたCDケースに気付く。


どんな…曲を聞いていたのだろう…。

この席で…千夏さんはどんな曲を聞いていたのだろう…。



そう思うと、胸がチクリと泣いた。



CDケースに目をやることもなく、自然にラジオを付けた誠さん。

言葉じゃなくても、彼の痛いくらいの優しさが胸を打つ。


少しずつ街の明かりが減っていく。

暗い山道に吸い込まれていく車。



このまま…本当に吸い込まれてしまえばいいのに。




この

優しくされる度に積み重なっていく罪悪感も

勘違いしながらも沸き上がってくる甘い気持ちも

真っ暗の夜道に吸い込まれて消えてしまえばいいのに。


そしたら

そしたら楽になれるのに…。
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