-roop-
「俺さ…」
澄み渡った空気を少し吸い込む音がして、誠さんの声が響いた。
「…?」
手摺りにもたれたまま、私の左側で夜空を見上げる誠さんに視線を移した。
「千夏が……目を覚ましてくれて…本当に…むちゃくちゃ嬉しい…」
「誠さん…」
「こうして…また肩を並べることが出来て…本当に幸せだと思ってる…」
誠さんの瞳には瞬く星が映っていた。
ほんのり流れる夏風が誠さんの黒髪を撫でる。
ふとぶつかる二人の視線。
黒く潤んだ彼の瞳に私の輪郭が…千夏さんの輪郭が浮かぶ。
「…こうしてお前といれるだけで…俺すんげぇ幸せだから…ありがとうな…」
「……っ」
『お前』と言った時の誠さんの低く深い声が、胸の奥の奥に染み渡った。
熱く
熱く
震え出す心。
誠さんの瞳に映る千夏さんの姿が…自分の瞳から溢れ出すもので歪んだ。