-roop-
ふと自分の手を眺める。
昨日握られた力強い温もりが、微かに蘇ってくる。
初めて病院で手を握られたときは、突然のことで戸惑って彼を悲しませてしまった。
けれど、昨日触れた温かい彼の手は…とても心地良かった。
身体を通って、心まで染み渡るような温もり。
いつもそうだ。
誠さんの優しさはあまりにも真っ直ぐすぎて、千夏さんの身体を突き抜けて、本当の私の心にまで届いてしまう。
私じゃない
私じゃない
何度言い聞かせても、彼の真っ直ぐな想いを受け止めるのが私の心である限り、その言い訳は通用しなくなっていった。