-roop-
私は洗面台の前に立ち、鏡に映った千夏さんと向き合った。
やっぱりまだその姿を見る瞬間は、ビクッと震えてしまう。
もう分かり切っているはずなのに、つい自分の頬に触れ、鏡の中の千夏さんが同じ動きをするのを確認してしまう。
「貴方が…愛されてるん…だね…」
私と同じ動きをする鏡の中の女性に、そっと呟いた。
「…羨ましいな…」
鏡の中の女性は、あくまで私と同じ動きをしているだけ。
私と同じ人なんかではない。
私ではなくこの人が…
彼のあの優しさと想いが全て向けられている人なんだ。
彼の優しさを…真っ直ぐすぎる優しさを、身を以って実感しているからこそ、
世界でただ一人…
その想いを受ける権利を持つ千夏さんを、心から羨ましいと思えた。