-roop-

「…何言ってんだろ…」


ショートの髪をくしゃっと掻きむしる。



『羨ましい』だなんて、何言ってんだろ私は。



本当の私は…

こうして誰かに

大切にされたことはあったかな


自分が自分であるというただそれだけで…

他のことは無条件に

愛を注いではもらえたのかな


泣きたくなるくらいに

愛されたことはあるのかな


たとえ死ぬ前の本当の私が、誰にも愛されることなく、命を散らしていったのだとしても


誠さんの気持ちが、

今の本当の私に向けられてるのなら

それで…構わないのに


そう思った。


そんな醜い私の心を戒めるような、鏡に映った千夏さんの顔。


「…千夏さん……」



分かってるよ…。






ザアアアァー


思い切り捻り出した水で顔を洗った。
< 126 / 293 >

この作品をシェア

pagetop