-roop-
キィ…


リビングに戻ると、窓からは太陽の陽射しが差し込んでいた。

ふと私の心が直感した矛盾。





--誠さんはいない…なのに…部屋が明るい--







『…で、今日もまた暑い日になりそうですね~!最高気温は昨日と』



半ば無意識にテレビの電源を切った。

静まり返った部屋に、ただただ明るい光が差し込む。



壁で、汗を光らせ、ギターを掻き鳴らす男の人のポスター。

自分の後ろに大切な何かがあるなんて、思いもしないだろう。

どんな気持ちで誠さんが貴方を見ているかなんて、思いもしないだろう。



……当然なのに。




このポスターに写っている人は、何も知るはずがないのに。

何も悪くないのに。

私の中で色んな気持ちが混ざり合って、汚い色になっていたからだろうか。

自分の好きなことしか見えていないようなポスターの中の人物が憎らしかった。






誠さんはまだ待つと言ってくれたけど…

約束したあの日に、絶対に式を挙げなくちゃならない。


でも、きっと今の私が何を言っても誠さんは


『無理しないでいいから。ゆっくりでいいから。』


と言うだろう。



ゆっくりでいいから…と。
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