-roop-
「……作ってたよ…」
ドクン…
誠さんの煙に混じる声が、夜空に吸い込まれた。
「…たまにだけど…なんか料理の本引っ張り出して…作ってたなぁ……」
遠くを見るような誠さんの横顔。
自分で聞いておきながら、その想い出を共有できないことが
悲しくて…辛かった。
「そうだ……お前が事故に遭う前の日の夜は……すんげぇ辛い肉じゃがだったな…」
誠さんがクッと笑うと、灰色の煙がブワッと空に舞った。
「肉……じゃが…?」
ドクンッ…
やっばりあのメモは……千夏さんの最期の…っ
「すんごい味が濃くて…あん時は二人でむせながら食ったんだよな……っ」
ふと私の方を振り向いた誠さんの笑顔が引き攣った。
「ごっ、ごめん俺…っ!」
誠さんの顔が狼狽する。
思わず何も知らない私に想い出の同意を求めてしまったと、誠さんは慌てて謝った。
「…う、ううん!私が知りたいって言い出したんだし!なんか、私の方こそ………ごめん…っ」