-roop-
貴方と千夏さんが共有している最期の想い出を掘り起こさせてしまって…
ごめんなさい…。
けれどそれよりも本当は切なかった。
今の誠さんが優しく微笑みかけるのは間違いなく私なのに
こんな優しさを違う人にも…千夏さんにも向けていたのだと思うと
たくさんの笑顔を見せていたのだと思うと…
泣きたくなるくらいに胸が軋んだ。
…彼は千夏さんのものなのに…
あぁ…もう何度自分に言い聞かせた。
勘違いしそうになる度に何度自分に言い聞かせて来ただろう。
分かっているはずなのに
私の知らない誠さんがいることが、切なくて切なくてたまらなかった。
貴方はどんな風に怒るの
どんな風に眠るの
どんな風に抱きしめるの
どんな風に口づけるの
こんなに近くにいるのに
こんなに傍にいるのに
私には知らないことが多すぎる…。
知る必要なんてない
私が貴方を知る必要なんてないのに
もっともっと貴方を知りたいと…心が叫んでいた。
私よりも貴方を理解し、貴方に理解されている他の誰かが…
…千夏さんがいることが、悔しかった…。
近づいてはいけない
知ってはいけない
私は偽物なのだから
そして貴方は
私が地獄に行かないための…ただの道具なのだから……
。