-roop-
「千夏……?」
「ん…?」
「ありがとな……」
そう言って頭に乗せられる力強い手。
その手はまだ何処か遠慮がちだった。
普通に…
普通に振る舞いながらも
私を傷つけないように…傷つけないようにしている。
千夏さんを…傷つけないようにしているんだね…。
「やっ…やだなぁっ、御礼ならもう夕飯の時に聞いたよ?」
頭上の温もりに意識を奪われながらも、私は笑顔で言った。
「…うん……そうなんだけど……な」
誠さんはただ小さく私の頭を撫でる。
穏やかに浮かべられた微笑みに心を奪われていた。
まるで忘れられたように、誠さんが持つ煙草からは煙が夜空に舞い上がる。