-roop-



「………親友だよ……」





ドクンッ…


「親…友…?」


「そう…………親友…!」


わざと明るく言って、またビールを口に注ぎ込む。


初めて会ったときに千夏さんの両親のことを聞いたときもそうだった。




本当に辛いことは…わざと明るく言う人…。




「…信じて…たんだ………っ」


誠さんの背中が…小さく震える…。



「…会社の同僚で………いつだって…真剣に相談に乗ってくれた…心底信じて……俺は話してたんだ……なのに…っ」


「誠さ……っ」


たまらず背中に触れようとした途端、誠さんの声が自嘲的になった。



「なのにソイツな……?…俺の話した情報…まるごと持って……ライバル社に引き抜かれてったよ……っ」


「………っ」



触れようとした手が

行き場を失った。



「あー!俺なにやってんだろうなー…」



溢れ出すものをこらえるように、天井を見上げて言い捨てる。


「………」



傷ついた心とは裏腹に紡ぎ出される明るい声が

余計に私の心を締め付けた。

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