-roop-
「誠…さん………」
私は震える手を、誠さんの雨に濡れた輪郭に添えた。
誠さんは切ない瞳で、息を噛むように私のその手を強く握る。
もうその手は
怯えて遠慮がちに私を包み込んでいた手ではなかった。
泣きそうに笑いながら小さく私の頭を撫でる手ではなかった。
強く…
強く握り締められた手が狂おしいほど嬉しかった。
「誠…さん……」
無理なんかしてないよ…?
無理なんかしてない…
私は本当に
本当にそう思ったの…
「……結婚式……しよう……?」
私の手を握る誠さんの手が、ビクッと震えた。
私たちを押し潰すくらいに降り注いでいた雨が、再び小さな粒に戻っていく…。
「千…夏………」
ほんとだよ…?
嘘じゃないよ…?
千夏さんの存在は…
今の私の存在は嘘かもしれない…
でもね…
いま此処に在る私の想いは
決して嘘なんかじゃない…
「……貴方が……好き……」