-roop-
「…可哀相だけど、貴方はそこに行かなければならないかもしれない…」
?!
私は顔を上げて、一切の意識を彼女に向けた。
…何だって?
彼女はまた短くなった煙草を握り潰し、何も残っていないはずのその手の平をじっと見つめた。
その仕種が、まるで私の痛いほどの視線から逃げているかのようにも思えた。
「い…今…なんて…?」
私が問うと、彼女は見つめていた手の平を強く握りしめ、ゆっくりと私に視線を向けた。
「…貴方は…地獄行きの審判をくだされる可能性が高いと言ったの…」
そう言って私を見つめる彼女は、ひどく悲しそうだった。
私が死んでいるということよりも、私が全ての記憶を失っているということよりも、私が地獄行きであることが、比べものにならないくらい残酷なことだと
彼女の表情はそう物語っていた。
私の顔はひきつっていただろうが、まだ彼女の言葉を信じているわけではなかった。
「な…なんで言い切れるの?
だって…だってまだ審判は下されていないじゃない…
自分が生前何をしたのかも分からないまま地獄行きだなんてー…!」
私はこの受け入れがたい話を嘲笑するように言葉を零した。
すると、その言葉を制するように尖った彼女の言葉が飛ぶ。
「だからよ。」
「…え…?」
「貴方に…記憶がないのが何よりの証拠よ…?」
動揺する私を諭す彼女の瞳は、やはり哀れみに満ちていた。
「わ…私が記憶喪失なのが…証拠だって…?」
自分の口から出た音が、自分でも驚くくらいに震えていた。