-roop-
「おっ、海ちょーどいいぞ!少し温いくらいかもっ」
ジーンズの裾をめくり上げ、誠さんはバシャバシャと海の中に足を沈めていく。
「ほら!千夏も入れよ!気持ちいいぜ?」
夜の海に…無邪気な笑顔が輝く。
「…私は…いいやっ!だって服が濡れちゃし…」
私が砂浜からそう伝えると、少し先にいる海の中の誠さんはわざとらしくギッと目付きを変える。
「何だとぉ~?!海まで来て入らねぇとか俺は許さんっ!」
バシャッ
「きゃっ!」
誠さんが弾いた水が服にかかる。
「あぁー!…もーっ!」
頬を膨らませる私を、まるで子供のように笑う。
「ほら!もうどうせ濡れたから同じだろっ!」
誠さんは白い歯を零しながら手招きする。
夜空を流れる雲の隙間からは、時折淡い月が顔を出している。
その光の中で顔をくしゃくしゃにして笑う誠さんの笑顔が
嬉しくて愛しくて
そして何故か儚い気がして…
小さく…胸が泣いた……。