-roop-
バシャッ


「こっ、こら千夏!お前やりすっ…っておいっっ」


バシャッ


私は切なさを振り払うように水の中ではしゃぐ。


「もうそんだけ濡れたんだから同じでしょー??」


そう嫌味っぽく言いながら、私は小さく舌を出す。


誠さんは半透明になって身体に張り付いたTシャツを剥がしながら、笑いをこらえて無理に怒った顔を作る。


「ち~な~つ~!!」


ザバザバと私の方に歩み寄ってくる誠さん。


「ごっ、ごめんてばー!」


私はゲラゲラと笑いながら、小さく後ずさる。


あっという間にすぐ目の前にある誠さんの姿。



誠さんの後ろに見える月が

その姿を…その輪郭を…切なく際立たせる…。




好きで好きで

恋しくて恋しくて

離れたくない

傍にいたい




何より誰より…幸せであって欲しい人…。





「………っ」


込み上げる想いに…泣きそうになって息を噛んだ。

そんな私を見て、誠さんも切なそうな表情を浮かべる。



貴方は何も知らない。

何も知らない。

今此処でこうして貴方を愛しているのが、千夏さんではないということも。




明後日の誓いを果たした瞬間に…

約束を果たした瞬間にまた離れ離れになって…




もう二度と…

逢えなくなるということも…。

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