-roop-


小さく震えた声が胸に突き刺さる。

身体が…心が…魂が震え出す。




知ってた。

分かってたよそんなこと。




あんな理由で抱きしめたんじゃないことくらい分かってたよ?

ずっとずっと

貴方があまりに優し過ぎてこうできなかったことくらい

分かってたよ…?



ただ身体から伝わる熱が…想いが…あまりにも真っ直ぐすぎて

貴方を騙してる私には…弱くて小さな私の心には…

素直にそれを受け止める資格なんてないと思ったの……。





「……やっと………抱きしめられた……っ」


身体の奥から紡ぎ出すような声に胸が熱くなる。


「誠さん……っ」


私も誠さんの濡れた背中にギュッとしがみついた。




二人の熱で

身体に纏っていた水はその冷たさを失っていく。




互いに伝わる温もりが…どんどん熱くなっていく…。

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