-roop-
「その時も……キス…した…?」
真剣な顔でそう尋ねる私に、誠さんはフッと笑う。
「…内緒」
「…したんだ」
「だから内緒だって」
「絶対し……」
少し冷えた唇が重なった。
誠さんの影で暗くなっている視界に心臓が反応する。
こんなにもこんなにも近くに誠さんがいてくれるんだって…
胸が熱くなる…
唇が離れてもなお吐息がかかるくらいの距離…。
「……ずるい」
私が照れをごまかすように小さく言うと、誠さんは笑った。
「…何で俺が昨日…お前に突然海行こうって言ったと思う…?」
「………?」
二人が結婚を誓い合った場所だと
想い出の場所だということは痛いほどに知っていた。
そして昨日、
私がついそれを口にしてしまったことも誠さんだって分かっていた。
誠さんはまた海を見つめる。
その表情は、とても穏やかだった。
「此処な……今年の6月に…俺がお前にプロポーズした場所なんだ……」
夜に揺れる波の音が、ささやかに響く…。