-roop-

「ほら、行くぞっ」

握られた手。

この温もりが…生涯消えなければいいのに…。



ふと私たちの目の前に誰かが立ちはだかった。



「柏木……?」


その人の口からは、誠さんの名が零れる。


誠さんと同じくらいの年代で、スーツに身を包んでいたが、どこか軽い感じのする人だった。



「……櫻…井………」



誠さんは顔面を蒼白させながら呟く。



「え、誠さん、知り合…」



尋ねようとして

言葉を止めた。





誠さんに私の声は届いていなかった。

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