-roop-
表情は見えなくても、その背中からはただならぬ想いが溢れ出していた。
『なぁ千夏…誰にだと思う…?』
『親友だと…思ってた男にだよ…』
『まだ高蔵商事のこと根に持ってんの?』
『今から打ち合わせ!お前がくれた情報生かして頑張るよ!』
私は恐る恐る声をかける。
「誠さん…あの」
「千夏は何がいいっ?」
「……え……?」
背中を向けたままの誠さんから、予想外の明るい声が零れた。
「え……な…何がいいって…誠さ」
「なんか麺類って気分じゃねーんだよな~。何かがっつり食いたい感じ!」
誠さんの癖。
辛いときほど…明るく振る舞おうとする…
溢れ出すものを押さえるように、上を見上げながら話す…。
「誠さん…」
「いや、なんかパスタならありか…」
「誠さんっ……!!!」
誠さんの無理した明るい言葉が止まる。
相変わらず向けられた背中に、胸が痛んだ。