-roop-

刺さった言葉


人込みの中を

半ば無意識に駆け抜けた。


マエノチナツナラ

ソンナコトイワナカッタノニ

マエノチナツナラ

……マエノチナツナラ



誠さんの苛立った低い声が頭の中をぐるぐると回る。


聞きたくないのに…

思い出したくもないのに耳にこびりついて離れない。

心臓がひたすら鈍い音を上げながら全身に血を押し出していく。



私はただ貴方に無理して欲しくなかった。

私のことでたくさんの気持ちを押し殺してきた貴方だから。


せめて千夏さんに関係のないことくらいは…力になりたかった…。


貴方を騙していた罪滅ぼしのつもりなんかじゃない…。


ただ貴方が好きだから…

好きな人を支えたかった。





それだけだった…。
< 208 / 293 >

この作品をシェア

pagetop