-roop-
リビングに貼られたギターを掻き鳴らすポスター
「……ありがとね……今まで…隠しててくれて……」
私は小さくポスターをめくり上げる。
まだくっきりと残ったカレンダーの白い跡。
煙草で濁ったこの壁の色に見慣れてしまったせいか、より一層白くなっている気がした。
私はその白い跡をそっと撫でる。
ここのカレンダーが一番待ち望んでいた日が、ついに来たんだよ…?
なのにそのカレンダーは今…此処にはない…。
二人の想い出を見守ってきたカレンダーは…此処にはない…。
窓からは太陽の黄色い光が差し込んでいる。
ベランダに出ると、外は焼けるように暑かった。
蝉の鳴き声と太陽の熱と…よくある夏の風景。
なのに
嫌なくらいに纏わり付く夏の暑ささえも、何故か愛おしかった。