-roop-
空は晴天。
昨日の雨を思わせないような晴天。
「…誠さん……星…見れるね…」
--俺たちが行くときはいつも曇り…--
大丈夫…「最期」の星見ヶ浜は晴天だよ…誠さん…。
ふと隣で煙草をふかす誠さんの姿が浮かぶ。
お気に入りの赤い箱を握りしめて、静かに吐き出した煙に目を細める…。
その仕種についドキドキしてしまったっけな…。
あぁ此処に来て最初の夜は…
--千夏………っ--
泣いてたね…
泣いてたね誠さん……。
あの夜は…声をかけることすら出来なかった…。
知ってたんだよ…私…初めて逢った日から…
貴方が苦しんでたこと…無理してたこと…。
知ってたんだから…。
--少しだけ…抱きしめてもいい…?--
だから嬉しかった……嬉しかったんだよ…?
誠さんがいつも居た位置のベランダの手摺りをそっと撫でる。
この一カ所だけで、もうこんなにも想い出がある…。
こんなにも……胸がいっぱいになる…。