-roop-


「…私は……私は……千夏じゃないの……」



誠さんはゆっくりと顔を上げる。

その頬には…涙が伝っていた。


私は笑って言った。


涙が溢れて…胸が押し潰されて…心が引き裂かれそうだったけど

笑って…笑って言わなきゃ駄目だと思った。



「私は……貴方の愛した千夏さんじゃないんだよ……?だって」


「…あの箱の中のことを言ってるのか…?」


「誠さ…」



「…写真の中の千夏も…ビデオの中の千夏も……俺はどうしようもないくらい愛してる……愛してるよ…でもな…っ」



誠さんの瞳から次々と涙が溢れ出す…。




「…ゲーセンでカーレースが得意なお前も……煙草が吸えないお前も……っ……ガキみてぇに海ではしゃぐお前も……すぐこうして俺の傍を離れて行っちまうお前も…っ」


「ま…ことさ…っ」







「愛してるんだよ……っ」
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