-roop-

「………はぁ…」


自分を落ち着かせようと小さく息を吐く。

ふと視界に入るのは、窓の向こうの青々とした快晴の空……。


梅雨だというのに、もうここ一週間も雨が降っていなかった。

全く水気を持たずカラリと晴れ上がった空。


「今日は……先に買い物に行こうかな……」


いつもなら洗濯を済ませて夕方から出掛けるのに何故かそう思った。


なんか…気持ちが重いし…気分転換にもなるかな…。


私は鞄を手に取り、鏡の前で少し髪型を整えた。


ふと紫陽花のカレンダーで一際目立つ赤い文字。


『2日 プロポーズ』

思わず頬が緩んでしまう…



「よしっ……と…」


出かけようとして、ふと忘れ物に気づいた。

私はテーブルの上に置いてある赤い煙草の箱を手にする。

持ち上げたその軽い感触に、箱の中を覗き込んだ。



「あれ……もう数本しか残ってないや……」


私は小さく溜息をついて、その残り少ない煙草の箱をジーンズのポケットの中に押し込んだ。



「煙草も買わなきゃな~…誠の分ももうないかもだし…」




私は大きく息を吸い込んで玄関の扉を開けた。

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