-roop-
---------------


「あ、千夏ちゃん!」


「…西原さん!」


通りに出た私に声をかけて来たのは、同じマンションの隣に住むおばさんだった。

西原さんは早くもパンパンになったスーパーの袋を3つも抱えていた。



「うわ~またたくさん買い込みましたねぇ~」


「そうなのよ!商店街のマツダスーパーが今すんごい安いの!千夏ちゃんは今からお買い物?」


「あ、はい」


「じゃあ絶対マツダさん行った方がいいわよ!びっくりするくらい安いからっ」


「あぁ、はい、行ってみます」


興奮気味に話す西原さんを何とか上手くかわした。

いつもなら、本当ですか?!と食いついて、駆け足でそのスーパーに向かうのに

なのに…何故か全然惹かれなかった。


大体の食材は家にまだあるはずだし、いくら安いからって此処から離れた商店街まで行かなくても、そこらへんの店でいいやと…

何故かそう思った。

此処を右に曲がれば西原さんの言っていたお店に通じている。


私はそっちをチラッだけと見て、真逆の左側の道へと進んだ。


そのとき



鋭いクラクションの音が聞こえて



ああ何だろうと思ったら



身体に



ものすごい衝撃が走って…





遠くで…女性の叫び声が聞こえた…。
< 290 / 293 >

この作品をシェア

pagetop