-roop-
彼女は思わずほころんでしまったことを隠すかのように、慌てて煙草を取り出そうとジーンズのポケットに手を突っ込んだ。
掴んだ箱の感触で、最後の一本も味わってしまっていたことに気付き、照れを引きずりながらも、諦めてポケットから手を出すと、私と視線がぶつかった。
彼女は小さく笑って言葉を零す。
「…空…だった…」
「へ…?…あ、あぁ…さっき最後の一本吸ってたみたいだったけど…」
彼女は空の箱を潰した手を見つめながら言った。
「…あれが『最期』の一本か…」
…ズキン。
自分はもうすでに死んでいるのに、しかも地獄行きかもしれないのに、何故か彼女がものすごく可哀相に思えた。
彼女は私に哀れまれているの察知したのか、急に照れを隠すような強がった目つきになり、
「ねっ…ねぇっ、煙草…持ってないの?」
と、今までの切ない表情が嘘だったかのように威張り散らしながら手を伸ばしてきた。
「えっ…わ…私…煙草…?」
思わずポケットを洗いざらい探すが、彼女の求めるものは出てこなかった。
「ご…ごめん…持ってないみたい…なんだけど…」
私が申し訳なさそうに言うと、彼女はクッと笑った。
「…そっか…貴方…多分まだ未成年よね…」
未成年…。
この若さで私は…。
私は唇を噛み締めた。