-roop-
「…地獄だったなー……」
感情を何処かに置き忘れたまま、ポツリと呟いた彼女の言葉に胸が軋んだ。
その時のリアルな感情を伴うことが困難なほど、きっと壮絶だったのだろう。
私は唇をきつく結んだ。
「ははっ…地獄って言ってもさっき言った地獄じゃないよ?」
「……」
彼女の笑顔を見ても、もうその表情が無理して作られたものだということは明らかだった。
「でもね……その生き地獄から…救ってくれたの……彼が…」
彼女の言葉の中に『彼』が登場した瞬間、彼女の微笑みに心からの感情が伴った。
何も知らない私にも、彼女にとって如何にその彼が大切でかけがえのない存在なのか、彼女の心から溢れている微笑を見てとることができた。
「じゃあ……恩人だね………」
私の言葉に視線を上げた彼女の目はとても穏やかだった。
「そうね…そうかもしれない…」
あぁ…とてもとても……
…好きなんだろうなぁ…
切なくて切なくて
そしてやっぱり少し…羨ましかった…。