-roop-
彼女は再び面積を縮めた赤い箱をポケットに押し込んだ。
「あと…一ヶ月だったの…………」
箱を収めても、彼女はポケットに手を触れたまま下を向いて呟いた。
「え…?」
私が不思議そうにすると、彼女は顔を上げ、また悲しそうに笑った。
「結婚式……結婚式まで…あと一ヶ月だったんだ…」
「………!」
胸が…詰まった……
「まさか…あんな車の通らない道で…轢かれちゃうなんて…何やってんだろうね…!」
彼女はまた表情をくずして笑う。
そしてポケットから解放した手で無造作に髪を掻き上げた。
けれど、かきあげた手は彼女の髪を掴んでそのまま離さない…
「………結婚式……挙げたかったなぁ……」
微笑みの中から搾り出される彼女の声が、胸をえぐるように響いた。
「…初めてね…好きだって言われた海があるんだけど…そこでね…二人で…式挙げようっ…て……」
笑ったままの彼女。
指に絡みついた髪。
なにも…言葉が出なかった。