-roop-
彼女の願い
「えっ……?」
間近で見る彼女の真剣な瞳。
彼女に瞳には、当然ながら魂のみと化した私の姿は映っていなかった。
「………彼との…彼との約束を果たしたいの……!」
私の肩を掴む彼女の手に力がこもる。
その力強さに私の身体はビクッと抵抗した。
「な…なに言って……っ」
私は彼女の余りにも熱い視線に耐え切れず顔を反らした。
そらした目を覗き込むように追ってくる彼女の視線。
「お願い………貴方しか……貴方にしかお願いできないの……!」
冷静さを欠いたような彼女の口調に少し戸惑った。
「ちょ…ちょっと待ってよ…そんなこと言われたって意味分かんないし…っ」
彼女の痛いくらいの視線と口調から逃げるように、言葉を零した。
すると彼女はふと正気に戻ったかのように、ゆっくりと私の肩を掴んだ手を下ろしていく。
「そうよね……急に…そんなこと言われてもね…」
俯いたまま彼女は私に背中を向けた。
両肩に残る彼女の熱が…痛い。
「でも…でも時間がないの……早くしないと…完全に私の身体は死んでしまう……っ」
彼女の肩が小さく震えた。
「私は…私はもう身体に戻れない…」
そう呟くと、彼女は身体に力をこめたまま振り向いた。
「貴方なら…此処に来て間もない貴方なら…まだ私の身体に入れる…」
「なっ……っ!」
「私の代わりに…私の身体の中に戻って……彼との約束を果たして欲しいの…っ」
真っ直ぐ私を捕らえたその視線。
もはや目をそらすことが出来なかった。