-roop-
握られた手から伝わる温もりが…私の心に染み込んでくる。
私には関係ないはずなのに…
私は、私自身のためだけに、あの交換条件をのんだはずなのに…
何故か…彼にこれ以上悲しい思いをして欲しくないと…
彼のこれ以上悲しい顔を見たくないと、そう願っている自分がいた。
大丈夫…大丈夫だよ千夏さん…
誠さんを悲しませたりしないよ…?
私は強く握られた手に、そっと片方の手を重ねる。
「………!」
見開いた誠さんの目が、私の顔と手の間を往復した。
そして、次第にその表情がほころんでいく。
恥ずかしそうにはにかむ顔から、白い歯が零れた。
彼が笑うと…なんか嬉しい。
私はまだそれが、彼を騙している罪悪感から解放されるからだけだと思っていた。