-roop-
玄関から先に進むと、キッチン、そしてリビング。
その隣にもう一つ扉があった。
リビングには白い小さなソファー。
丁度二人用の…小さなソファー。
あとはテレビと、CDやDVDがたくさん詰め込まれた棚のような物が置いてあるだけ。
「よっしゃ!気合い入れて飯作るぞー!!」
袖をめくり上げた誠さんは元気良くそう言うと、キッチンの流しに向かった。
バシャバシャと手を洗う背中をじっと見つめる。
水音が止まり、誠さんはすぐ傍にあった冷蔵庫を開けてうきうきと中を覗き込んでいる。
「え…誠さんが…作ってくれるの?」
誠さんは冷蔵庫の中から次々と具材を取り出しながら答える。
「おう!いや~買った方が早いし旨いかな~とも思ったんだけどさ、やっぱ手づくりの方がいいかなって。ほらっ」
誠さんは両手に持った具材を私に見せる。
「じゃーん!今日は千夏の大好きなハンバー……グ…………」
誠さんの表情が…固まった。
--今…目の前にいる千夏は…ハンバーグを好きだと言っていた…千夏ではないかもしれない…--
彼の引き攣った笑顔からは、そんな不安が伝わって来た。
誠さんは慌てて笑顔を作り直す。
「…って日本人なら誰でもハンバーグ大好きだよな!うん!」
そう言って私に背中を向けてキッチンに立った。
私はどうしたらいいか分からなくて…
…彼の後ろ姿があまりにも切なくて…