-roop-
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カラカラカラ…


「お皿、洗い終わったよ」


昨日覗いたあのベランダの窓を再び開ける。


「おぉ、サンキュな」


そう言って煙草をふかす誠さんが、昨日の姿に重なって胸が痛んだ。




ベランダから見える緑の木々からは、蝉の鳴き声が響く。

まだ午前中とはいえ、太陽はその勢いを活発にしていた。

青々と澄み渡る夏の空に…灰色の煙が溶け込んでいく。






私はそっと誠さんの隣に並んだ。

すると誠さんは驚いたように私を見たが、ゆっくりと穏やかな笑みを浮かべ、また空に煙を吐き出した。


誠さんの横顔に、ふと問い掛ける。


「…どうして…中で吸わないの?暑くない…?」


壁があんなに白を失うまで、部屋の中で吸っていたはずなのに。



「…中で吸うと…煙たいだろ?」

煙に目を細めながら言う姿が、少し大人に見えた。

無邪気な笑顔だけじゃなくて、こんな顔もするんだと少し戸惑う。



私はそれを隠すように…言葉を続けた。
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