-roop-
「でも…いつもは部屋の中で吸ってたんでしょ?壁の色が……変色しちゃってる…」
私がそう言うと、彼はブハッと灰色の煙を吐き出した。
一本の筋を描いていたはずの煙は、戸惑うように空に消えていく。
「うん…まぁ確かに前は部屋で吸ってた……でも千夏が嫌がるかなぁって…」
彼がこのとき言った『千夏』は、今の私を指していた。
誠さんが今の私をいたわる度に、胸の奥がチクリと痛む。
けれど…
ごめんなさい、私は千夏さんじゃありません
そう言って泣いて謝ったとしても
きっとこの人は…私が千夏さんだと信じて疑わないだろうと思った。
そしてそれは決して、外見が千夏さんだからというだけじゃないだろうとも思った。
外見とか性格とか想い出とか、そんなものを消し去ったとしても…
そういう次元ではないどこかもっと深い部分で、彼は千夏さんを愛しているのだろう…。