-roop-
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到着したのはとあるコインパーキングだった。

エンジン音が止み、静かになった車内で誠さんがふと私に顔を向ける。


「こっから少し歩くけどいい?すぐ着くから」


「うっ、うん…」


狭い車内で近づけられた顔に、つい胸が高鳴ってしまう。

シートベルトを外そうとした時に、サイドミラーに映った顔が見えた。




切れ長の瞳に、茶髪のショートカット。



あぁ…彼の目に映っているのはこの姿なのに…。


思わず甘い感情を芽生えさせてしまいそうになった自分を自嘲する。

いっそのこと、私の周りが全てガラス張りであればいいのに。


私が他人に成り代わって、千夏さんに成り代わって彼を騙していると

……常に戒めてくれていればいいのに…。
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