地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐
ガーゼで覆い、包帯を巻いた。
普通なら、ここで終わり…。
だけど、あたしは“普通”じゃないんだ。
「…杏?」
「ん…?」
名前を呼ばれて、顔を上げた。
「…何すんの?」
「……早く治るおまじない。」
「……すんな。前…松沢を助けた後に、ぶっ倒れただろうが。」
!?
覚えてたんだ…。
柚莉を治した後、倒れちゃったんだよね。
でも…
「あの時は、全身の怪我だったから…
今日は、片腕だけだから大丈夫!」
微笑み、術をかける。
「痛みを還りて…治癒と為せ」
呪文を唱えると、陸の表情が柔らかくなった。
「…ありがと。痛みはなくなったよ。」
陸が大好きな笑顔で、
あたしの頭を撫でる。
「……っ……ふぇっ……」
安心して…我慢していた涙が涙腺を崩壊させた。