地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐


怪我をしても


修行が辛くても



泣かなくなったのに……。


なんでこの人の前では、
泣いてしまうんだろう。





この人に出会ってから、泣くことを思い出したみたい…。



子供のように、泣きじゃくる。





「…ごめんなさいっ……

怪我させちゃって……」



及川さんを振り払ってでも、術でもなんでも使えばよかった。



ガラスの破片を砂だって、何にだって変えられたのにっ…。



結界をつくることだって出来たのに…。




そうすれば、陸が怪我することもなかったのに…。



力があっても…大切な人守れてないよ……。



「…ごめんなさいっ……」


下を向いて、唇を噛み締める。







「……………杏。」



陸が、名前を呼んだ。
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