地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐
おいおい。何でもないじゃねぇだろ…。
顔を反らしたまま俺を見ない。
けど…杏が今にも泣きそうな顔をしている。
しょうがない…。
メガネを抜き取り、自分の胸に引き寄せた。
耳元で囁く。
「ん?…何かあるなら言えよ?」
耳元で囁く声に弱い杏は、こうすると…大概話す。
「………右手繋いで?」
珍しく杏がねだった。
繋いで指を絡める。
フニャっと笑顔になり、俺の胸に顔を埋めた。
「…ごめんなさい。…ただの我が儘だから」
「…………は?」
「撮影だから…テーマだから…わかってるんだけど。
咲さんと手繋いだの見て…嫌だった。」
お姉さんなのにな……とポツリと呟く杏。