地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐
あたしは…………
忘れたい程……嫌われてるの…?
存在を消したい程……嫌いなの?
出会ったことさえも、後悔する程嫌な思い出…?
“マリナ”って呼ぶ声は、一生…あたしには向けられないの?
『杏っ…!』
『杏ちゃん♪』
『杏樹』
何か企んでる時だけ、“ちゃん”付けで呼んでた。
最初…出会って名前を知った時から…必ず名前で呼んでくれてたのに……
今は、もうそれさえも叶わない。
あの優しい笑顔が、温かい声が、安心出来る腕が、
あたしに向けられることは、ないんだ。
もう……ムリだよ……っ…
何かに心が押し潰されそう…っ…
「…っ……咲さん。
あたし……先に帰りますね。今日もお疲れ様でした。」
ペコッと頭を下げる。