地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐
「あ……ん……ちゃん」
あたしを呼ぶ咲さんの声も悲痛だ。
ソファーに置いていたバックとコートを掴み、逃げるように病室を出る。
『…身の程知らずのバカ女』
陸に抱きしめられた腕の中で、マリナが妖艶に口端を上げていたのには、気付かなかった。
バタバタと走り、病院で人気のない非常階段まで来た。
「ハァ…ッ……ハァ……ッ…」
誰もいないことを確認すると…その場にズルズルと座り込む。
「〜〜〜〜っ………うぅ……ふぇっ……ヒック……〜〜〜〜……」
堪えていた涙が、洪水のように溢れ出した。
「うぅ〜〜〜……陸〜……」
名前を呼んでも…あの人が戻って来るわけじゃないのに……。
あたしは泣きながら、何度も呼び続けた。