地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐
誰の前でも泣かない。
泣くのは、必ず一人で。
それは、幼い頃から変わらない。
人前では、絶対に泣かない杏樹
唯一人前で泣けたのは、滝本君の前でのみ。
その存在が失くなったら、どうなる?
唯一甘えられた存在を無くしたら…。
私じゃ、滝本君の代わりは出来ないんだ。
もっと甘えて良いのに、弱音を吐いて良いのに。
絶対にそんなそぶりを見せない。
だから
おかしくなったんだ。
「神崎さん、この問題解いて」
「……はい。」
杏樹が席を立ち、黒板の前まで行く。
数学の応用問題
チラッと問題を見ただけで、スラスラと解いていく。