地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐
――咲Side――
夕方…帰宅すると
珍しく陸が早めに帰って来ていた。
リビングのソファーに座り、何かを考えている様子。
「今日は早かったのね?」
「あぁ…咲姉か……おかえり」
「ただいま」
コートを脱ぎ、ソファーに置いて、陸の近くに座った。
お手伝いさんの岡本さんがコーヒーを持って来てくれる。
それを受け取り、すすった。
テーブルの上にある雑誌を眺める。
カップをテーブルに置いた瞬間、陸が話し掛けて来た。
「咲姉さ…神崎杏樹って子知ってる?」
「知ってるけど?…杏ちゃんがどうかしたの?」
正直驚いた。
杏ちゃんのことを忘れてから…いや別れた時から、一切彼女の名前すら出さなかったから。
突然、名前を出すなんて…。
思い出したのだろうか…?