地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐

搾り出すような声で告げた。


「俺が……?」

コクンと頷く。


「我が儘言ってすみません…ただそれだけです…。」

ペコッと頭を下げて、スタジオに戻ろうとした。


「待てっ…」

パシッと手首を掴まれる。


「………っ……イヤッ!!」

一瞬体が固まるが、陸の手を振りほどいた。


「えっ………?」

陸の表情が曇るが、あたしはその場を去る。





バタバタと廊下を走り、トイレに駆け込んだ。


「ハァハァ………」



誰もいないことを確認すると…涙が溢れ出す。


「ヒック………ふぇっ……う゛ぅ゛……」



掴まれた手首を見た。

変わらない温もり……


でも…マリナを抱きしめた手で、頭を撫でた手で、抱いた手で…

あたしに触れて欲しくなかった。
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