地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐
ノロノロと顔に手を伸ばす。




……………冷たい。



「…………、…っ」


指に力が入らない。抱きしめたいのに…指がいうことを聞かない。


ただ触れるだけで……



冷たい。あれほどに温かったのに、どうしてこんなに?


……………冷たい。

『陸は人間カイロだね』といつか言った時、めちゃくちゃ睨まれたけど…

『杏限定のカイロだな』と笑ってくれた。




力を振り絞って陸の体を抱き起こす。



「……………っ」



堪えて堪えて、ただひたすら堪えていた涙が、せきを切ったように溢れ出た。



「……っ…ごめんなさいっ…」



片口に顔を埋めて、抱きしめる。



陸たちをあの部屋から出したのは、あたしの我が儘。
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