地味子の秘密 其の弐 VS金色の女狐
左腕には、点滴がしてあるから、右手だけなんだけど……。



「……あのさ……」

「ん……?」


体を揺らして聞き返して来た。


「本当にさ……あたしなんかが隣にいて良いの?」

「は………?」

「だって…陸の周りには、綺麗な子はたくさんいるし…地味子がいて良いのかと思って……」


言い寄られた人数は、数え切れないくらい…いたはずだもん…。


下を向いて、唇を噛む。


「はぁ…………」


何故か、ため息をつかれた。


肩から顔を上げて、あたしの両頬を手で挟む。



「“あたしなんか”じゃなくて、“杏だから”欲しいんだよ」


真っ直ぐに、目を見て言われた。



「良いの…?何の取り柄もないし、地味で、ブスで、貧乳でずん胴だよ…?」
< 691 / 698 >

この作品をシェア

pagetop