お兄ちゃんといっしょ。
先ほどまで数メートル先に居た兄は、今や目の前で彼の手首を無茶な方向に捻り上げていた。
「うっ、うああああああ!?」
軋むような痛みに、彼の顔が青ざめていく。
ああ、助けなきゃ。
お兄ちゃんを止めないと。
そう思うのに、体はまるで凍ったように動かない。
「さて、家に帰ろうか」
兄が笑う。いつもの優しい笑顔じゃなかった。
「彼にも来てもらおう。……いろいろと、教えてあげなきゃいけないからね」
冗談でも笑いごとでもなく。
私は、人生最大の修羅場に直面していた。