お兄ちゃんといっしょ。
ver.4 俺様

私の兄は、かなりの自己中さんです。


「おい」

帰ってくるなり、玄関に仁王立ちしている兄を見て、私は顔をしかめた。
嫌な予感しかしない。

「……何」
「お前、土曜暇だろ」
「暇じゃない」
「嘘つくんじゃねぇ、男も居ないくせして」
「友達は居るもん、兄ちゃんと違ってたくさん」
「うるせぇよ、誰に向かって口聞いてんだお前」
「友達の少ない自己中男」
「よし、決定だ。お前が暇だろうと暇じゃなかろうと関係あるか。お前、俺の部屋掃除しとけ。逆らった罰として、今からお前の金で飲み物買ってこい」

ど こ の い じ め っ 子 だ よ。

あまり相手にすると調子に乗るので、こんな時は華麗にスルーしちゃうべきなのである。
そんなわけで、私は非難がましい視線を兄に向け、無言で兄の横を通りすぎた。

「ちょっ、待てよ!!」

アレだけ命令口調で言っておいて、兄は私に無視されたとわかると、慌てて私の後を追ってくる。

「お前、俺の言うことが聞けないのかよ」
「聞けるわけないでしょ。妹の前でまで出来てない俺様気取らないでよ」
「何だとお前っ……」
「だいたい人に物頼むならそれなりの誠意ってもんがあるでしょうに」
「……」
「ったく、俺様男がカッコよく見えるのはフィクションの中だけだっての。実際そんなことされてもウザいだけだし」


「……すみませんでした」


……訂正しよう。
私の兄は、俺様になりきれない―――特に私の前では―――俺様なのである。
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