お兄ちゃんといっしょ。
今朝の言葉に対してのショックを拭えないまま、私はその日を過ごした。
廊下や階段で時々兄とすれ違ったが、私は兄を露骨にスルーした。まるで他人を装うかのように。
兄は私を見掛ける度にオロオロとした表情で何かをしようとしていた。
一度だけ肩を掴まれて話しかけられたが、
『触んないでよ』
と言って手を振り払った。
兄はそれでも何かを言おうとしていたが、私はそれを聞かずにその場を去った。
妹とも思えない、そんなこと言われて怒らないはずがないのだ。
やはり重い気持ちのままで帰宅すると、玄関に、先に帰ったらしい兄が待ち構えていた。
が、私は気にもとめずに通りすぎた。はずだった。
「おい」
戸惑うような声に腕を掴まれて、強制的に止められた。
「今朝は……その、」
「許さないから」
今更何を言っても遅い。うすっぺらい言葉じゃ許されないことを、兄は私に言ったのだから。
「そんな、別にお前のことそんな風に思ってるわけじゃ、」
「言ったよね。妹とも思えない、って」
だからもう関係ないよね、言って、立ち去ろうとしたその時。
「待てってば!」
腕を強く引っ張られて兄の方を向かされる。兄の表情は露骨に戸惑っていて、何処か必死さがこめられていた。
「許さなくていい……けど……」